思わぬところで、恩師の近況を知る

一昨日のこと。子どもの習い事に、OBである高校生がお手伝いに来てくれました。私自身は、その高校生とは「はじめまして」だったのですが、試験前などで自分の練習がない時は、時々顔を出してくれるそうです。子どもたちにとって、その男子高校生は、自分たちと同じように練習をしていて、強豪校の選手になったので、まさに憧れの存在です。親としては、そんなすごい先輩が来てくれるのは、ありがたい限りです。ちなみに、その高校生は、偶然にも私の高校の後輩でした。

 

高校時代の担任の先生が、子どもがやっている習い事のスポーツの顧問をしていたことを話したところ、「◯◯先生ですか?」と聞かれました。「いや、もうだいぶ前の先生だから知らないと思うけど、△△先生って言うんだけどね」と答えました。すると、

 

「その先生知ってます!」

 

と答えてくれたのです。とても驚いて、「何で知っているの?」と聞いたところ、

 

「強化練習のコーチをしてくださったので、知っています」

 

と教えてくれました。

 

担任の先生とは、もうしばらく連絡をとっておらず、持病もお持ちなので、お元気なのかなと気がかりでした。5年ほど前に定年退職をしているはずなので、もうそのスポーツとも縁遠くなっているのかと勝手に思っていました。

 

偶然出会った高校生から、元担任の先生がまだまだお元気で、今なおご活躍であることを聞き、本当に嬉しく思いました。

 

その担任の先生には、とても感謝していることがあります。それは、社会人になって、大学院に再入学して、母校である高校での教育実習をするためのやり取りを通じて、先生が私の性格をよく分かってくださっていたことを知る機会があったことです。

 

私が教育実習に行った時期は、ちょうど教員免許法が改正される時期だったのですが、ほかの学生の教育実習の期間が2週間だったのに、大学院生で教員免許を取っていた私の場合、新しい免許法がされるため、1人だけ例外的に3週間実習になってしまうという事情でした(新免許法では3週間実習、旧免許法では2週間実習という時期でした)。高校の教務の先生から、

 

「出身の中学校にも聞いてみて、ダメだったら特別に受け入れます」

 

と言われてしまいました。

 

このことを大学に報告し、教職課程の先生と相談した結果、高校側の言うとおりに中学校に聞いてみて、断られたら高校に打診することにしました。

 

そして、地元の中学校に、教育実習を受け入れていただけるか連絡したところ、一緒に実習をする方が、偶然短大生の方(この方も3週間実習)だったので、すんなりと受け入れて下さることになりました。

 

実は、元担任の先生の担当科目と私の専門が同じなので、ぜひその先生に、教育実習の指導をしていただきたいと思っていました。しかし、中学校で受け入れて下さることになったので、高校で実習することは諦めなければならず、元担任の先生に指導していただけないことが、とても残念でなりませんでした。

 

高校に連絡を入れようと思っていた矢先、なんと元担任の先生から、自宅に電話をいただきました。その時に、こんなことを言われました。

 

「お前のことだから、馬鹿正直に中学校に実習の申し込みをしたんじゃないかと思って…。まさか、中学に電話してないよな?」

 

とおっしゃるではありませんか。もちろん、私も大人なので、学校側の事情(本音)は分かっていたつもりでした。しかし、教育実習というのは、大学を通してお願いしていることですから、社会人学生ということもあり、大学にも迷惑をかけたくなかったので、大学の先生とも相談して、正攻法で行動したのでした。

 

先生は、私が大学の先生と相談した上で、中学校に許諾してもらったことを伝えたら、「だから言わんこっちゃない」ということを言われ、先生もとても残念がってくださいました。

 

私としても、高校で実習をしたいと思っていましたし、自分の担任の先生と偶然同じ科目でその先生に指導していただけるチャンスを逃したことは、非常に残念でした。でも、このやりとりのおかげで、卒業して10年弱の月日を経ても、私の性格などをすごく良く分かっていてくださっているのを知ることができたのが、何より嬉しかったです。

 

「先生って、生徒にとってはいつまでも先生なんだなあ~」と、先生に対する感謝の気持ちが沸き上がったことを、今でも鮮明に覚えています。高校時代の元担任の先生は、私にとって、間違いなく心に残っている先生の一人です。

 

このやり取りの1年後、中学校に教育実習に行き、その数か月後に晴れて教員になることが決まったので、先生には、自分も先生と同じ職業に就くことになることを、電話で報告しました。

 

それ以来、先生とはすっかりご無沙汰してしまっています。当時のことは、とても感謝していますが、教員になったからこそ、ますます先生が私にしてくださったことがありがたいことだと思えるようになりました。教員になる直前に、先生から大切なことを教えていただいたので、教員時代、一人一人の生徒のこと(性格・性質)を、なるべく理解しようと思って接するよう心がけていました。そして、今は、担任の先生が私にしてくださったような、生徒思いの先生が、一人でも多く教育現場で活躍してくれることを願って、日々仕事をしています。

 

そんな思いで教育に携わることができるようになったのは、間違いなく高校時代の担任の先生のおかげなのです。一昨日の高校生との出会いは、近いうちに、なんとかチャンスを得て、元担任の先生にお会いして、近況報告を兼ねてお礼を言いたいと思わせてくれた、良い機会でした。