AO入試は、自分と向き合う良い機会

6月も半ば。高校3年生で運動部に入っている方は、そろそろ引退を迎える時期にさしかかったのではないでしょうか?3年間打ち込んできた部活動の最後の大会が行われる時期。全力を出し切れますことを、陰ながら祈っております。

さて、そんな高校3年生にとって、部活の引退とともに本格的に始動するのが、進路のことだと思います。

大学受験をする場合、AO入試を一つの選択肢として考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?引退したら、本格的に準備をしようという心づもりの方が多いかと思います。

私も、一教員として、AO入試にチャレンジする生徒を、何人もサポートしてきました。少し特殊な入試なので、一般的な受験勉強とは、入試の対策が全然違います。特殊なだけではなく、場合によっては倍率が10倍を超すこともある、かなり難関な試験なのです。しかも、一般受験の勉強をしながら、AO入試にも備えるというのが一般的なので、戸惑うことも少なくないと思います。

ちょうどこの時期(6月下旬)に、このAO入試にチャレンジしたいと相談にやってきた、ある女子生徒さんについて書きたいと思います。

彼女は、中学生の頃からある科目(私が担当していた科目)が好きで、高校3年生になる時、やっぱりその科目のことが勉強できる大学に行きたいと思うようになったそうです。その時にも相談されたので、いくつかの大学を薦めたところ、某大学にAO入試があることを見つけ、条件を満たしていたのでぜひ受験したいということで、相談にやってきました。

一緒に入試要項を確認していたら、書類審査の提出書類に、「自分でまとめた論文(レポート)を添付しても良い」と書かれていました。これを見て、

「添付してもいいってことは、もちろんやるでしょ?」

と彼女に伝えました。

最初、提出する論文として何を書いたらいいか思いつかず、頭を抱えていました。でも、なぜその科目に興味があるのか、どうしてそのことが好きなのか…など尋問をしまくっているうちに、彼女が自分でやりたいテーマを見つけてきました。

夏休み中、受験勉強の合間にその課題に取り組み、論文がある程度書けたら私のところに持ってきてチェックして…というのを繰り返しました。その作業をする中で、彼女は、大学で学びたいことがどんどん明確になっていったのです。

彼女が用いた手法は、現地に行って、見ず知らずの人に話しかけて、インタビューしたことを基に論を展開していくというものでした。元々物おじしない性格のようで、

「農家のおじさんに声かけてお話聞いていたら、お昼の時間になっちゃって、そうめんをご馳走になっちゃった!」
と、とても嬉しそうに話してくれました。

彼女は、合格できるかどうか、とても心配をしていましたが(結果的には見事合格)、この課題に取り組んだことで、「絶対に合格したい!自分のやりたいことは、こういうことなんだ!」と思えたそうです。合格するかどうかにかかわらず、大学に進学するにあたって、学ぶ目的が明確になっていたほうが、より充実した大学生活を送れると思います。

AO入試は、単に特殊な入試というだけではなく、高校生が、自分と真剣に向き合う、とても良い機会になりうるものだと思います。チャレンジするか迷っている時間があるなら、ちゃんと準備をして、チャレンジしてみる価値はあると思いますよ。