講師室での情報交換

昨日は、理系の大学で授業をしてきました。授業が終わって、講師室で仕事をしていたら、2人の先生が私を挟む形でお話をされていました。お2人の会話に聞き覚えのある学生さんの名前が出てきたので、思わず「その学生さん、一昨年授業を担当していたから、知っていますよ」と言って、話の輪に入れていただきました。

 

私は、教職課程(学校の先生になるための教員免許を取るためのコース。以下、教職)の授業を担当することが多いので、教職を履修している学生さんとは面識があります。教職の授業のみ担当しているので、話題に挙がった学生さんの名前を知っているということは、教職履修者ということになります。他の先生方は、その学生さんが教職を履修していることを知らず、そのことにとても驚いていました。

 

その学生さんは、現在4年生。就職活動をしているそうですが、苦戦中とのこと。教職を取っていたことは初耳だったそうで、先生方には、「それを活かした仕事や教育関係の仕事にも目を向けるよう、アドバイスできるから、良い情報を下さってありがとうございます」とおっしゃっていただきました。

 

大学で講義を担当している立場では、個々の学生さんとのかかわりはありますが、専門分野・担当業務が違う教員同士が、その学生さんについて情報交換ができる機会はほとんどありません。この点が、高校までとは大きく違うと思います。偶然の産物でしたが、とてもいい機会でした。多少なりともお役に立てたのなら、本望です。

 

その学生さんの話から、今年卒業した学生さんで、一発で教員採用試験に合格し、教壇に立っている方の話題になりました。なんと、一緒にお話をしていた先生のゼミ生であることが発覚!他にその先生のゼミの学生さんを数名挙げていただきましたが、全員自分が授業を担当した学生さんで、とても嬉しくなりました。

 

彼らの近況を知らなかったので、今日お会いした先生に卒業後、どのような道に進んだかを聞くことができたのが、本当によかったと思っています。お名前が挙がった学生さんは、私が担当していた授業でも、とても優秀な成績を収めていた方だったので、具体的にどんな様子だったかを、先生方にもお伝えしました。ゼミを担当していた先生は、

 

「うちの学生、そんなに褒められることがないから、嬉しいです」

 

と、とっても笑顔でおっしゃっていました。こちらとしても、学生さんの頑張りをお伝えできて、ほっとしました。

 

なかなか、講師室で、同じ学生さんを担当している他分野の先生方と居合わせる機会がないですが、情報交換は結果的に学生さんのよりよい学びにつながると思います。これからは、もっと先生方と積極的にコミュニケーションをとって、学生さんの情報交換をし、よりよい授業や指導ができるよう、心がけたいです。

コマ切れ時間の活用法

中学生・高校生にとって、1学期の期末テストを目前に控えている時期ではないかと思います。準備のほうは順調でしょうか?

 

期末テスト前だと部活動が休みになる場合がほとんどだと思います。しかし、部活の強豪校や熱心な部活だと、試験前といえども特別練習があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんな時間のないお子さんに対して、保護者の方もご心配かと思います。

 

今日は、「まとまった時間がない=勉強できない」と悩んでいる方に、コマ切れ時間の活用法について、実体験を基に書きたいと思います。

 

私自身、高校時代、部活動がさかんな学校に通っていたので、試験前の部活動停止の期間くらいしか時間がなくて、大変だと感じていました。が、ある体験から、試験前にまとまった時間がとれることは、すごく贅沢なことだったことに気づきました。

 

それは、教員として朝早くから夜遅くまで、土日もなく働きながら、かつ家事・子育てもあるなかで、受験勉強をしたことです。その時の私には、文字通り、全くまとまった時間がなく、自宅で30分以上、連続で勉強できる時間がとれませんでした。

受験科目に英語があったのですが、久しぶりの受験ですっかり忘れており、思い出すにも時間がかかりました。自信のない英語の勉強にまとまった時間が当てられず、どうやって勉強時間を確保するか、非常に悩んでいました。

 

そこで、同僚の英語の先生に相談したところ、こんなアドバイスをいただきました。

 

➀結局、トータルである程度時間が確保できればいいので、細切れでも問題ない。

②「●●駅から△△駅までの15分間で、10行訳す」など、細切れの時間でできる課題を、細かく設定する。

 

ということでした。例えば、英文和訳をする場合、1つの問題(大問1のような)を全部まとまってやらなければならないと思い込んでいましたが、まとまった時間がとれないなら、分けてやっても良いというアドバイスは、まさに目から鱗でした。

 

その先生は、ご自身が長年生徒を指導してきた経験から…

 

「どちらかというと男子の方が集中できる時間が短いから、細かく時間を区切った方が、実は効果があるんだよ」

 

と教えてくださいました。

 

私の場合は、本当に家で勉強する時間がなかったので、通勤時間をフル活用しました。どんなに長くても、連続でできる時間が30分しかなかったので、その30分で大問1問をどれだけ解けるかに挑戦したり、乗り換えの間電車を待っている5分間といった細切れ時間は、自分に単語テストを課したりしていました。

 

最初は、電車の中だけの勉強で身に付いているのか、半信半疑でした。ですが、やってみると、時間が限られているので嫌でも集中でき、結果として効率よく勉強することができたと思っています。

 

まとまった時間がなくて悩んでいる中高生の皆さん。ぜひ、細切れの時間を有効に活用してみてください。アドバイスをしてくださった先生曰く、1時間まとまって勉強するのが苦手な方は、15分×4セットでもいいそうです。その間に短い休憩を入れるのもアリだそうです。

 

さっそく、細切れの時間がいつ・どれだけあるか洗い出し、明日の朝の通学から、試してみてはいかがでしょうか?

女子高生の、ステキな解決方法

ある日のこと。中3の時に担任をしていた、高1(当時)の女子生徒(以下、Aさん)に、通勤・通学の電車でばったり会いました。近況報告もそこそこに、彼女は深刻な顔をして、

「●●さん(以下、Bさん)、今年も同じクラスなんだけど、今、大変なんだよね~」
と、その様子を話してくれました。

Bさんは、友達を作るのがあまり上手ではない生徒で、だいたい一人でいます。Aさんは、そんな一人になりがちなBさんに気配りできる、とても優しい性格の持ち主。彼女と一緒のクラスだから安心していましたが、どうやら、Bさんは、Aさんの優しさだけでは満足できなくなってしまったようです。

Bさんは、高校生になり、高校から新しく入ってきた友達ができました。彼女にとって、ものすごく嬉しいことだったと思います。ですが、親しくなるにつれ、その新しい友達に対し、傷つける言葉を発してしまったそうです。その結果、距離を置かれてしまい、一緒にお弁当を食べてもらえなくなってしまったそうです。Bさんはそれが嫌で、ますます攻撃的になってしまい、新しい友人たちたちはますますBさんを避ける…という悪循環な状況とのこと。

Aさんは、自分が一緒に食べてあげたい気持ちはあるのですが、Bさんのことを受け入れられない友人たちとも仲が良いので、それもしにくいと話してくれました。

そんな話をしているうちに、学校に着いてしまったので、「何かあったらまた話してね」と言って、Aさんと別れました。


一週間後、また電車でAさんとばったり。例の話は、急展開していました。

Aさんによると、中学から上がってきた別の友人(以下、Cさん)が、Bさんが一緒にお弁当を食べたいとこだわっていることを解決する名案を考えて、実行してくれたそうです。その案とは…

毎日、クラス全員で、教室で一つの輪になって、お弁当を食べる!

というものでした。この方法なら、Bさんも一緒に食べたいと思っている子たちと、一緒に食べていることになるし、疎外感も味わわなくてすみます。Bさんに苦手意識を持った子たちも、執拗に一緒に食べようと言われたり、そのことで傷つくことを言われたりすることもなく、少し離れた場所にいれば、無理して会話をしなくても良いからです。

Cさんのすごいところは、Bさんの性格を理解して、クラスの仲間に理解してもらって、協力してもらったことです。男子生徒含め、みんなに理解してもらえたのは、彼女の人望がなせる技!彼女の成長ぶりには、本当に関心しました。

ちなみに、BさんとCさんは、中1の時に同じクラスで、CさんはBさんの性格をよく理解していたこと、AさんのようにBさんを受け入れてくれる子がいたことが功を奏したと思います。

この学校は、幼稚園から大学までありますが、各学校段階で入試を行っていて、ずっといてもいいし、途中から入ってきても良いという、風通しの良さがあります。

一貫校ならではの長い付き合いの上に、風通しの良さが相まって、クラスの問題を上手く解決した彼女たちに、心から拍手したいです。こういう点が、一貫校ならではの魅力だなあとしみじみ思った出来事でした。

電車通学への憧れと現実

中学校3年生にとって、部活を引退し、期末テストも近づいているこの時期、そろそろ本格的に高校選びを始めるかと思います。ご本人・親御さんにとって、高校受験が初めての受験という方も多いかと思います。

保護者の立場で、先輩のお母さん方から、現実的な高校選びのお話を聞く機会がありました。その時に話題になった、「電車通学の憧れと現実」について書きたいと思います。

地域の公立の学校に通う場合、中学校までは徒歩または自転車なので、高校は、初めて自分の定期券を持って、電車通学ができるチャンスですね。そういう理由で、電車通学に憧れを抱いている生徒さんもいるのではないでしょうか?

ある男子高校生は、部活を重視して高校選びをしたそうです。いくつか行きたい学校のうち、自転車で行ける学校もあったのですが、下り方面ならあまり混んでいないし、大丈夫だろうと思い、学校や部活の雰囲気も自分に合っているというのが一番の理由だったのですが、電車で行く学校に進学することを決めました。

電車通学自体に不満はなかったのですが、その学校に通う生徒は比較的近隣の人が多く、1時間ほどかけて通学する生徒は少数派だそうです。加えて、部活の練習や試合などで、早朝集合・遅い時間に終わることも多く、通学に1日2時間とられるのは、その分家にいられる時間が短くなるので、思っていたより大変だと感じているとのことでした。

保護者の方も、小・中学校ほどではないにしても、学校行事や面談等で学校に行かなければならないので、例えば20分の面談のために、往復で2時間かけて行かなければならないのが、負担に感じるそうです。

一方、ご家庭の事情で、「自転車で行けるところに行ってくれたらありがたい」ということをお子さんに伝え、中学生の本人も悩んだ結果、自転車で10分程度で行ける高校に進学した方がいました。電車で行く学校に憧れを抱いていたようですが、やりたい部活もあり、学校も近くて通学も楽なので、今となっては満足している様子とのことでした。

親御さんの立場では、なるべく本人が行きたいと思っている学校に行かせてあげたいと思われるでしょうが、通学時間・手段を含めて、高校生活なのです。本人が行きたい学校に進学できるのが一番ですが、通学も含めて、本当にその学校に行きたいかを、シュミレーションしてみてはいかがでしょうか?お子さんはどうしても目の前のことしか見えないことが多いと思うので、親御さんの立場から、お子さんには、近い学校・遠い学校のメリット・デメリットをお話ししてあげること、そして時には理解してもらうことも大事なのかと思います。

なお、私事で恐縮ですが、自分の両親に、兄弟が多いことを理由に、「公立の高校で、自転車で行ける学校以外は認めない」と言われていました。たまたま行きたい学校は、自転車で行ける範囲にあったので良かったのですが、当時、自宅から自転車で行ける学校が数校しかなく、選択肢が狭まったことを大変不満に思っていました。

しかし、高校に入学して、自転車で20分弱で通学できるメリットは、とても大きかったです。睡眠時間を十分に確保できる、友人より長く部活に当てられる、忘れ物をしたとしても学校には十分間に合う、買い食いしない(=お小遣いが減らずに済む)、勉強時間も長くとれる、朝そんなに早起きしなくて良い…など、枚挙にいとまがありません。

電車通学に憧れている中3生の皆さん、自宅から自転車で通えるような通学時間が短くて済む学校も、ぜひ選択肢のひとつに入れて、メリット・デメリットを検証してみたらいかがでしょうか?

とことん自分と向き合って…

数日前に、高校3年生にとって、「AO入試は、自分と向き合う良い機会」について書きました。

 

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 この梅雨の時期というのは、生徒の進路相談を受けることが多く、どうしてもそのことを思い出してしまいます。今日は、上記の記事に書いた生徒とは別の、高3の時にとことん自分と向き合った結果、意外な、でも最善な選択をした男子生徒の話をしたいと思います。

 

その方は、彼が中3の時に担任した生徒で、高校生になってからもたびたび訪ねてくれるので、折々話を聞いていました。彼が1番進路選択で悩んでいたのは、高校1年生の時に、理系にするか文系にするかということでした。

 

彼は、さんざん悩んだ結果、「理系」を選択しました。高校時代は勉学に打ち込み、かなり成績は良かったのですが、高3になって、いざ大学受験となった時に、

 

「理系も勉強したからできるけど、興味があることは文系なのかな?」

 

と思うようになったそうです。

 

彼は、自分がいったい何に関心があるのか、徹底的に向き合いました。ノートに自分が興味があること、その理由、大学では何を学びたいか…など、とにかくたくさん書き出し、時折報告しに来てくれました。

 

その結果…

 

「自分がやりたいことは、理系・文系に分けることができない」

 

ということに気づいたようでした。それで、理系・文系が複合的になっている学部の存在を知り、その大学のAO入試にチャレンジすることにしたのでした。

 

AO入試の準備をしていく中で、大学で学びたいことがかなりクリアになっていたので、合格できるものと思っていました。ですが、残念ながら不合格となってしまいました。彼は、どちらの可能性も考えて、しっかり受験勉強もしていたので、何一つ慌てることなく、一般受験に頭を切り替えて、受験勉強を重ねました。

 

AO入試でチャレンジした大学にも再びチャレンジしましたが、残念ながら「補欠」となり、合格には至りませんでした。別の大学には合格したのですが、なぜかその大学はしっくりこなかったようです。

 

そこで、悩んで出した結論が…

 

「浪人する」

 

ということでした。浪人をして、自分が何に関心があるのか、学問としてどんなことをしたいか、もっともっと自分と対話をしたいと思ったそうです。そして、大学という枠にとらわれずに、また同年齢の方だけではなく、いろいろな年齢の方と関われる社会的な活動をしたいという意欲も芽生え、それにもチャレンジしたいと思うようになっていきました。ですが、その活動をするにあたり、代表の方には、次のようにアドバイスをされていました。

 

「一緒に活動してくれるのは嬉しいけど、大学に合格するまでは、受験勉強が優先だよ」

 

と。それで、すぐにでも活動したいという気持ちをセーブしつつ、自分と向き合うことにしたのです。1年間じっくり自分と向き合いながら、自分のペースで受験勉強をした結果、晴れて翌年大学に合格することが出来ました。高3の時にAO入試を受けた大学とは別の大学ですが、理系と文系が複合的に学べるというところで、彼がしたいことをするにはぴったりなところだと思いました。

 

高校3年生にとって、その先の進路を決めるのはなかなか難しいし、勇気のいることだと思います。ですが、ここに紹介した彼のように、納得いくまでとことん自分と向き合うことが、良い選択へと結びつくのだと思います。彼の大学生活は充実しているようで、最近は近況を聞きませんが、また良い便りが来ることを楽しみにしていたいと思います。

 

 

 

 

 

踊り場でのアポ、その後

昨日は、先週踊り場で声をかけて下さった女子学生さんと、面談をしました。1時間くらいのつもりが、1コマ分(約90分)話し込んでしまいました。

tachibanashi.hateblo.jp


先週は元気がなさそうだったので、どうやって話を聞こうかと思って、ちょっとドキドキしていました。おずおずと、「どんな相談ですか?」と聞いたところ、笑顔でいろいろとお話をして下さいました。すごく深刻に悩まれていたわけではなかったので、本当にホッとしました。

彼女は、大学3年生なので、そろそろ卒業後の進路を絞らなければならないと思っており、来年の今頃のことを考えるとすごく不安になってしまったそうです。

どうやら、大学卒業後すぐに就きたいお仕事はある程度固まっていて、もう一つの選択肢は、ゆくゆくは考えているけど、今のタイミングではないという結論に達したそうです。もう一つの選択肢を将来的に選ぶにも、大学生のうちに資格を取っておかなければならないことは十分理解されていました。

ここまでご自身で分かっていれば、何も心配ないと思いましたが、ご相談の趣旨は、もう一つの選択肢を選んだ場合、どのタイミングで何をすれば良いかを知りたいということでした。

いくつかの方法やそれを選んだ場合の状況などお話しましたが、よくよく聞くと、もう一つの選択肢というのは、親御さんが望んでいる道で、その期待に応えた方がいいのかを気にしていました。

「親御さん思いの、良いお嬢さんなんだな~」と思いつつも、彼女の意思は堅そうだったので、彼女と同年齢ぐらいだった時の自分の体験談を話し、


「親御さんは、自分の子どもが楽しんでいるのを、必ず応援してくれますよ」

とお伝えしました。実際彼女のご兄弟も自分の道を歩んでいて、それを彼女のご両親は心配をされていると同時に、ものすごく応援しているというエピソードを聞きました。

親御さんの気持ちを慮ることができるのは、一人の大人の女性として、とても素敵なことだと思います。それは、今まで育てて下さった感謝の気持ちに起因するのでしょう。でも、だからと言って、そのためにご自身気持ちに蓋をすることはないと思います。

面談を終えた後、とても清々しい表情をされていたので、もう大丈夫だと思っています。
こうやって、授業担当を離れた後も相談に来てくれるのは、本当に嬉しいものです。

AO入試は、自分と向き合う良い機会

6月も半ば。高校3年生で運動部に入っている方は、そろそろ引退を迎える時期にさしかかったのではないでしょうか?3年間打ち込んできた部活動の最後の大会が行われる時期。全力を出し切れますことを、陰ながら祈っております。

さて、そんな高校3年生にとって、部活の引退とともに本格的に始動するのが、進路のことだと思います。

大学受験をする場合、AO入試を一つの選択肢として考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?引退したら、本格的に準備をしようという心づもりの方が多いかと思います。

私も、一教員として、AO入試にチャレンジする生徒を、何人もサポートしてきました。少し特殊な入試なので、一般的な受験勉強とは、入試の対策が全然違います。特殊なだけではなく、場合によっては倍率が10倍を超すこともある、かなり難関な試験なのです。しかも、一般受験の勉強をしながら、AO入試にも備えるというのが一般的なので、戸惑うことも少なくないと思います。

ちょうどこの時期(6月下旬)に、このAO入試にチャレンジしたいと相談にやってきた、ある女子生徒さんについて書きたいと思います。

彼女は、中学生の頃からある科目(私が担当していた科目)が好きで、高校3年生になる時、やっぱりその科目のことが勉強できる大学に行きたいと思うようになったそうです。その時にも相談されたので、いくつかの大学を薦めたところ、某大学にAO入試があることを見つけ、条件を満たしていたのでぜひ受験したいということで、相談にやってきました。

一緒に入試要項を確認していたら、書類審査の提出書類に、「自分でまとめた論文(レポート)を添付しても良い」と書かれていました。これを見て、

「添付してもいいってことは、もちろんやるでしょ?」

と彼女に伝えました。

最初、提出する論文として何を書いたらいいか思いつかず、頭を抱えていました。でも、なぜその科目に興味があるのか、どうしてそのことが好きなのか…など尋問をしまくっているうちに、彼女が自分でやりたいテーマを見つけてきました。

夏休み中、受験勉強の合間にその課題に取り組み、論文がある程度書けたら私のところに持ってきてチェックして…というのを繰り返しました。その作業をする中で、彼女は、大学で学びたいことがどんどん明確になっていったのです。

彼女が用いた手法は、現地に行って、見ず知らずの人に話しかけて、インタビューしたことを基に論を展開していくというものでした。元々物おじしない性格のようで、

「農家のおじさんに声かけてお話聞いていたら、お昼の時間になっちゃって、そうめんをご馳走になっちゃった!」
と、とても嬉しそうに話してくれました。

彼女は、合格できるかどうか、とても心配をしていましたが(結果的には見事合格)、この課題に取り組んだことで、「絶対に合格したい!自分のやりたいことは、こういうことなんだ!」と思えたそうです。合格するかどうかにかかわらず、大学に進学するにあたって、学ぶ目的が明確になっていたほうが、より充実した大学生活を送れると思います。

AO入試は、単に特殊な入試というだけではなく、高校生が、自分と真剣に向き合う、とても良い機会になりうるものだと思います。チャレンジするか迷っている時間があるなら、ちゃんと準備をして、チャレンジしてみる価値はあると思いますよ。