友だちへの「怒り」の気持ちは、実は「思いやり」だったりする

小6の男の子(A君)が、学校から帰るなり、口をとんがらせながら、興奮した様子で、話し出しました。

 

「B君、今日も学校休んだんだよね。みんなで(注:一緒に帰る、家の方向が同じ仲間のこと)宿題とか届けたんだけど、「まだ頭痛いかも…」って言ってさー。学校来る気あんのかな?休んでいる間も、ゲームばっかりやってたんじゃない?どうせ、宿題もやっていないんだよ。もっと(勉強が)分からなくなっちゃうし…(後略)」

 

A君とB君は、これまで何度か同じクラスになっていて、お互いの家を行き来したり、放課後も遊ぶような仲です。B君は、お休みが2日続いていたのですが、届け物をした時に、「たいして具合が悪くない(とA君は感じた)のに、なんで学校に来ないんだろう?」と感じたようで、とても怒っていました。あまりに興奮しているので、

 

「B君のこと、そんなに心配なの?」と聞いたところ、

 

「心配に決まってんじゃん。だってさ、算数だって、全然わかんないみたいだし。だったら俺、あいつと遊ぶ時に一緒に宿題やろうって言うけど、「宿題、持ってくるの忘れた」とか、「お母さんとやるからいい」とかで、誘っているのに無視するんだよ。本当に自分でやってるのかな?このまま中学行って、大丈夫なのかな…(後略)」と、まだまだ興奮冷めやらぬ感じでした。

 

A君は、仲良しの友達であるB君が、算数が苦手なことを良く分かっています。一方、A君自身は算数が得意です。友達がそんなに困っているなら、助けてあげたいと思っています。でも、何か逃げ腰なB君に対して、「許せない」と思ってしまい、でも何か自分はしなければ…と思って、どうしていいか分からなくなってしまったようでした。

 

A君が、B君に対して怒ってしまったのは、どうやら「思いやり」からきているようです。また、「怒り」は、B君に向けられているというより、B君の役に立てない自分自身に対するほうが大きいように思いました。そこで、

 

「A君は、B君のことが心配なんだよね。じゃあ、うちで遊ぶときは、必ず宿題を持ってきてもらって一緒にやったらどう?心配なら(私がいれば)様子を見ているけど、どうかな?」

 

と提案したところ、

 

「それ、いいね。宿題忘れたって言ったら、取りに帰らせる!」

 

と、まだ怒りは完全に収まらない感じで答えていました。

 

もう一つの方法として、担任の先生に、「B君のことが心配になっちゃって、困っている」と、自分の気持ちを伝えてみることを提案しました。が、「えー、めんどくさい」と言って却下されてしまいました。そこで、ちょっと食い下がって…

 

「B君のことは、A君だけが心配しているんじゃないでしょ?だったら、自分だけじゃなくて、他の友達と一緒に、先生に自分たちの気持ちを伝えに言ったら?」

 

と伝えました。そうしたら、だいぶトーンダウンして、「ほかの友達と一緒なら、言えるかも」と答えてくれました。

 

仕事上、中学生以上の子と接する機会が多いのですが、経験上、これが中1だったら、もっとB君のことをもう少しそっとしておくと思います。たった1歳違いと言えども、小6だと、友達を見守ってはいられず、ほおっておけなくなってしまうようです。それはA君に限らず、少なくともB君の家に届け物をした5~6人の仲間も、ほおっておけないと強く感じ、怒りを感じていたようです。

 

子どもがプンプンと怒っている時、それが本当に相手に対して怒っているのかは、よく見極めなければならないようですね。

 

つい、「そんなに友だちのことを悪く言っちゃだめだよ」とか、「そんなに怒ったってダメじゃない」とか、「そっとしてあげなさい」と大人目線で言ってしまいがちですが、「怒り」の奥にある本当の気持ちを、言葉にしてあげる必要があるんだなあということを、A君の「怒り」から学びました。小学生って難しいなあ~。